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木蓮

 

私の心は紫色

私を映す風は紫色

ああ 一切は過ぎ去りました

遠く昔に 一切は過ぎ去りました

 

払う気さえ消失、消失、消失

紫色の風に嬲られるまま

私の沈殿した澱を攫って行くのです

 

あなたはいつも庭を見ていて

どんな風にも媚びる事なく

一本の紫木蓮と二本の白木蓮を置き土産に

 

私の心は紫色

私を遷す風は真っ白な木蓮

その花弁の見事なことと言ったら

涙こぼれる程 見事なことと言ったら

けれどもうあなたは何処へ逝ったやら…

ああ 一切は過ぎ去るでしょう

遠く近くの未来に 一切は過ぎ去るでしょう

 

過去の風は憧憬、憧憬、憧憬

白色の風に撫でられるまま

私の消失した涙を掬って行くのです

 

私の心は紫色

私を掬って行くのは白の色

けれど、ああ何故でしょう

哀しみも救いもなく脈々と流るるは

 

私の一切は赤い色が嵐のように渦巻いて

私の一切を過ぎ去るのです

私の一切を過ぎ去るのです

 

最後に残るのは

詩織として昔作った紫色の花弁

 

紫色の心と匂い惑う赤い色

茜雲を東の空に見て、もし風を感じたら

私は詩織抱きしめ何処へ行こうというのやら

私は詩織抱きしめ何処へ届かんというのやら

 

 

『境界』より…共通お題「風」

「木蓮」